わが家をスマートホームにするために必要なネットワーク機材
WiFi ネットワーク
スマートホーム実現にまず必要なのがWiFiネットワークです。実はWiFi無しでもスマートホーム対応機器を利用することは出来ますが、スマートホームのイメージとして代表的な「スマフォでコーヒーメーカーを遠隔操作」や「音声で照明を点ける」などを行うにはWiFiがどうしても必要です。さらに、WiFiの普及具合という観点からもスマートホーム構築においてWiFiは前提条件と理解して差し支えないでしょう。
では逆にWiFiネットワークだけでスマートホームを構築できるかというと、これも可能だけれど限定的と言えます。例えば、カメラ内蔵のドアベルなどは画像情報をリアルタイムに送るために、WiFiのような太いデータ通信環境が必要です。私は前の家ではSkyBellというドアベルを使ってましたが、今回はringです。
ringはアプリが良く出来ていて、訪問者をカメラで見る、という使い方以外に近所のringユーザー同士でコミュニティを作って不審者や小包泥棒の動画などをシェアすることでコミュニティ単位のセキュリティを作るのに役に立っていると感じました。
話をWiFiに戻しますが、電源コンセント(アウトレット)のスイッチをオンからオフにする(もしくはその逆をする)ためだけにWiFiを利用するのは効率が悪いと言えます。トラックでピザを届けに行くような感じでしょうか。
ということで、スマートホームに特化したネットワーク技術とその規格が10年以上前からあり、現在はそのうち2つが一般的な住居をスマートホーム化する上でポピュラーになっています。
「Z-Wave ハブ」か「Zigbee ハブ」(もしくはその両方)
Z-Wave と Zigbee はスマートホーム利用を想定した機器でネットワークを構築するのに適した規格です。どちらも長所・短所がありますが、今後のスタンダード覇権争いをしているというより、おそらくは暫くの間は両方とも利用される状況が続いていくような雰囲気です(まぁ両陣営とも自分の方が優れていると主張はするだろうけど)。
その違いを解説する前に、共通点を見ていきます。
- どちらもWiFiに比べてずっと少ない消費電力で通信できる
- どちらもWiFiよりも部品が安価
- どちらも複数の機器がお互いに連携して繋がることで広い範囲をカバーするネットワークを作れる(メッシュネットワークと呼びます)
- どちらもWiFiネットワークに参加するためには「ハブ」という機器が必要(ブリッジとも呼びます)
- どちらも通信メッセージは暗号化している(AES 128ビット。セキュリティ面ではさしたる違いはないということ)
このうち、メッシュネットワークの概念は重要です。これはデバイスどうしが連携してメッセージを目的のデバイスに送る仕組みで、例えば2つのデバイスがお互い電波が届かない距離に配置されていたとしても、間にあるデバイス群が中継器の役割を果たしてくれるのです。
もうひとつ重要な点としては、Z-Wave もZigbeeもWiFiのプロトコルを話すことが出来ないので、通訳が必要になるということ。「ハブ」という機器はこの仕事を一手に引き受けてくれるのです。(この機能は厳密にはハブではなくブリッジとしての特徴ですが、ハブという言葉が製品に使われていることが多いようなので、そう表現しています)。前述のスマートホームのイメージとして「スマフォでコーヒーメーカー遠隔操作」とありましたが、WiFiに繋いだスマフォが、WiFiを話せない Z-Wave対応のコーヒーメーカーのスイッチを入れることが出来るのはハブのおかげです。
では、なぜWiFiだけだとスマートホーム構築が難しいのかとうと、問題点としていくつかあるけれども主要なものだけで言うと:
- WiFiは繋がらない箇所(デッドスポット)が出来やすい。それを避けるためにはアクセスポイントを増設する必要が生じる(コスパが悪い)
- WiFiのアンテナ部品が高い。最近では電球自体にWiFiアンテナ部品が組み込まれているものもありますが、ちょっと前までは単価100円にもならない電球一個に千円以上かけてWiFi対応にしなくてはならず、そういう製品はなかなか出てきませんでした。
- WiFiルーターだけで数百以上(数千以上)の機器を管理するのは難しい(WiFiルーターが扱えるのは250台ぐらいだそうです。Zigbeeハブは理論上は65000の機器とネットワークを構成できrとのこと。)
- 機器によってはWiFiはサポートされていない(KevoというスマートロックはBluetoothのみです。家の施錠をWiFi機器として利用するのはリスクがあると考えたのでしょう)
というわけで、スマートホーム機器の多くはWiFiではなく Z-Wave か Zigbee もしくは他の規格を使って通信します。
Z-Wave と Zigbeeの違い
細かいところはネットで読んでもらうとして、特に興味深い点:
- Zigbee は2.4GH を使う。これ、WiFiの2.4GHZとモロ被りです。ということはお馴染み電子レンジとの衝突も起こりえます。逆にZ-Waveは900MHzあたりで、WiFi信号の干渉はありません。アパートなどのWiFi信号(そしてその多くは2.4GHz)が飛び交っている場所では上手く動作しない可能性がありますね。
- Zigbee の方が距離が短い。10~20メートルぐらいだったと思います。対してZ-Waveは30メートルぐらい(ただし、一番新しいバージョンでは100メートルとある)
- Zigbee はZigbeeアライアンスという複数の企業で、対してZ-waveは特定の企業の技術(元はデンマークの会社。2019年1月現在はSilicon Labsという企業が所有))。
- Amazon Echo にはZigbeeのハブがビルトインされてる。じゃぁひょっとして競合のGoogle HomeはZ-Wave?なんて思ったけど調べた限りではGoogle Homeはビルトインハブはない(もちろん連携は出来る)
- Zigbee のメッシュネットワークは6500ぐらいの数の機器で構成出来る。Z-Waveはハブも含めて最大232。通常のご家庭ならどっちでも十分。
そういう細かい違いはある、あるけど実際にそれがどれほど問題になるかというと、個人的に気になるのはZigbeeの2.4GHzぐらいで、これもWiFi側を5GHzにしてやれば回避できる。ただし、ご近所さんのWiFi電波に対しては対応が難しいかもしれない。
その他のスマートホームネットワーク
一握りほどありますが、例えばHomeDepotなどで買えるLutronという照明器具メーカーのスマートホームソリューションで「Lutron Caseta」というのがあります。
これは独自のプロトコルなので、Z-WaveやZigbeeのハブは一切使い物になりません。Lutron Smart Bridgeという製品を別に買って、WiFiにつなげる必要があります。照明に特化したシステムとしては安定性が評判のようです(Zigbeeで同じ目的で照明機器を操作する場合に比べて安定していたというエピソードを読みました)。
オススメの構成
まずはハブですが、SamsungのSmartThingsが便利だと思います。というのもSmarThingsハブはZ-WaveとZigbeeの両方をサポートしているからです。これを家のどこか、出来ればWiFiルーターから離れた場所に設置する。WiFiルーターは5GHzのみなら問題ありませんが、2.4GHzを使っているなら干渉を防ぐためにも離れた方がいいと思います。WiFiルーターとSmartThingsハブの接続はイーサネット(Cat5e)が理想ですが、SmartThingsハブはWiFiアンテナもあるようです。
どのスマートホーム機器を繋げるか
これはニーズによって異なりますが、どのカテゴリーをスマートにしたいかで買いそろえるものが決まってくると思います。
- 「照明を中心とした機器を上手に使って節電したい」 → 照明のスイッチ、スマート電球、卓上ランプの点灯を電源コンセントから制御、照明を適切な明るさにする、など。照明のスイッチ類は壁に埋め込むタイプ、コンセントにプラグインするタイプ、物理的にスイッチを押すタイプ、などがあります。壁に埋め込みタイプはちょっとした電気工事が必要ですが、簡単な2-wayならワイヤーを繋ぎ変えるだけで完了です(3-wayはちょっとややこしくて私は個人的には手に負えなかったです)
- 「セキュリティーを強化したい」→ カメラ付きドアベル、モーションセンサー付きカメラ、スマートドアロック、窓などが空いたことが分かる検知器、などがあります。日本だとセコム、アメリカだとADTなどがありますが、それらのサービスの代わりに自分でホームセキュリティを実装することは可能です。もちろん、サービスに比べると実際の事件が起こったときの対応は自分次第にはなりますが、選択肢のひとつです。
- 「音楽やテレビの視聴をもっと楽にしたい」→ スマートスピーカーやテレビを操作するスマートリモコンなど。スピーカーではSonosが有名ですが、SonosはWiFiで接続します(スピーカーはBluetoothが多いですが、WiFiだとスマートホームネットワークに参加できます)。テレビなどの赤外線リモコンを使う機器は、その操作をスマートホームの一部に統合して出来るようになるスマートホーム機器があります。通常、操作したいリモコンを使ってリモコン自体を登録して利用するようですが私は試したことはありません。ちないに、赤外線リモコンで操作できるならエアコンでもDVDプレイヤーでもなんでも操作できるそうです。
- 「家事洗濯などを自動化した」→ 家電そのものがスマートホーム対応であれば可能です。また、ルンバのような掃除機を購入するときにWiFi対応のものを買えばスマートホーム機器として使えます。これは実際のところ、買い替えが難しい耐久消費財の話なので、次の買い替えのタイミングまではスマートホーム化は難しいでしょう。
スマートホームコントローラーで一元的に管理
さて、スマートホーム機器をニーズに合わせていろいろと組み込んでいくと、全体としてかなり混沌としていきます。例えば:
このようにいろんなネットワークにつながっている状況になるかもしれません。どれかに統一すればスッキリする、とは思いますが機器によっては特定のスマートホームネットワークでしか使えないものもあります。統一する、という方法は早めに諦めた方がいいでしょう。
では、どうするかというと、二つあります。
まずは、それぞれの機器を、その機器のメーカー純正のアプリ等で操作することです。これは十分可能ですし、アプリの質によってはその方が使い勝手が良かったり、特定の機能がアプリでしか使えなかったりすることもあるでしょう。スマフォに「スマートホーム」というグループを作り、そこにスマートホーム関連のアプリを全て入れておくだけで十分かもしれません。ただし、いくつかの問題が起こります。
- スマートホーム機器の連携やグループ化が出来ない。グループとして扱えないので、個別のアプリから同じ動作(例えば「消灯」)を繰り返さなくてはいけない。
- 音声入力が出来ない場合がある。音声コマンドを使って操作したいとしてもアプリに音声認識の機能が無ければ無理です。ところでAmazon Echo PlusはそれそのものがZigbeeハブでもあるので、そのハブに登録したスマートホーム機器は音声コマンドで操作できます。
ということで、残りもうひとつの方法が、コントローラーを使うことです。コントローラーはこの場合Alexaなどのアプリです。(Google Homeも使えるでしょうが、私は使ったことがないのでどのぐらい統合できるのか分かりません)。コントローラーを使うことで以下のような使い方が出来ます:
- 複数の機器をグループ化して、一定の状態に名前を付けることが出来る。名前で操作できるようになる。これは「事務所を消灯」と言えば、事務所にある照明やドアの施錠などをひとつのコマンドで済ませることが出来るようになるということです。こういう名前と付けた状態を「シーン」と呼びます。
- 音声コマンドを使える
- 音声コマンドでなくても同じアプリのジェスチャーで機器を操作できる。例えば、照明をOFFにするジェスチャーは機器やアプリによって異なるかもしれません(スライド式ボタンなのか、タップ式のトグルなのか)。コントローラーを使えば同じ「消灯」ジェスチャーなので操作ミスが減ります。
他に出来ること
IFTTTというサービスがあります。私も今日まで知りませんでしたが、さっそく試してみましたが、スマートホームとの相性が良さそうです。まだ使い始めたばかりなのでどのように活用できるか解説できる経験がないんですが、さまざまなイベント、例えば特定のメアドからGmailでメールを受け取ったら特定の曲をスピーカーから流す、とかそのようにしてスマートホーム機器をより便利なやり方で活用できるような気がします。
まとめ
スマートホーム関連の技術はいろいろと出ているし、機器の種類も様々ですし、関連したアプリもたくさんあって、とにかく混乱してしまします。でも、原則としては「ネットワークに繋いで使う」という意味では単純です。ネットワークはWiFi、Z-Wave、そしてZigbeeさえ知っていればとりあえずはOK。あとは機器をニーズに合わせて検索して、そのどれかのネットワークに繋がればOK。Alexaなどのコントローラーを利用するかどうかは後決めでもOK。スマフォに入れれば使えるので、不便を感じてから使うパターンでもOKでしょう。
おまけ。IKEAのスマートホーム機器
IKEAはTRADFRIというスマート照明シリーズを出しています。SmartThingsにZigbeeでつなげることが出来るということで、スマート電球を娘たちの部屋の照明として設置し、SmartThingsに登録しようと試みたんですが、いったんは検出・登録は出来たんですが、接続がうまくいかず結局SmartThingsで使うことはあきらめて、IKEAの純正のリモコンを買ってきました。電池を入れて10秒ぐらいでペアリング完了。スマートホームではなく単なるリモコン照明になってしまいましたが、すぐに使えるようになって感動しました。