シアトル生活はじめました

20年以上すんだ東海岸から西海岸に引っ越してきました。MicrosoftのUniversal Storeで働いてます。

フライ・フィッシングのフライ作りの道具~フライ・タイイング・バイスについて

うわ~、はてなブログ投稿めちゃめちゃ久しぶり!

シアトルの釣り友達がフライフィッシングのフライを作成するフライタイイングバイス英語で fly tying vice について質問があったので、その道1年そこらの超初心者の私の意見をここでまとめることにしました。(ほら、初心者の情報の方が役立つってことがあるでしょ、たまに!)

なお、在米の友達向けの話なので、アメリカで流通しているバイスを例に挙げますがあしからず。

道具の名前などを日本でどう呼んでいるのか分からなかったけど、検索したらよさげなのが出てきた。

 

tsurihack.com

 

・・・で、質問は「fly tying vice にもいろいろあるけどどう違うの?」でした。

僕が今分かっていることで3つぐらい重要な特徴と種類があることに気づきました。

 

特徴その1 ジョー(Jaw = あご)の種類(ヘッドとも言う)

フライフックを固定する部分のことで、ここの仕組みが見たところ大きく2種類あるようです。ここ部分はフックを固定する役割をもちます。フライタイイングの究極の目的はフックの改造なので、そのフックを固定するパーツとして最重要箇所かもしれません。逆に言うと、この機能があって両手がフリーになるのであればそれはフライタイイングバイスだと言えるでしょう。

人食いサメの映画、Jawsジョーズ はあごのこと。ジョーはその単数形

1)手の力で Jaw を開いてフックを固定するタイプ

このタイプの仕組みはごく単純で、要は洗濯バサミのように「手の力で開いてから、隙間にフックを挟む」というやり方です。強い力で閉まっている状態のジャーを、手でギュっと開き、フックを挟んだら手を放して固定完了。

このタイプはRegalという有名メーカーのバイスで採用されているものです。他のメーカーでもあるのかもしれませんが、なんかRegalといえばこのジョーのような印象です。

 

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regalvise.com

 

長所としては、使い方が簡単、どんなサイズのフックも付けられる(フックのサイズを変える度に微調整がいらない)、機構が単純なので壊れにくいなどがあるでしょう。

短所としては、握力が無い人は使いづらいかもしれないし、たくさん作る時は手が疲れるかもしれません。

2)レバーでフックをロックするタイプ

このタイプは「レバーを使ってロックする」メカニズムです。普段は開いている隙間にフックを挿入して、レバーを「閉」の位置にクキっつとやる感じ。Cam lock とか camlock と呼ばれたりするようです。フックのサイズが大きければ隙間は大きめ、逆に小さい場合は隙間は小さめ、と微調整が必要です。

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僕はこのタイプを使っています。ブランドはDyna-Kingというもの。

dyna-king.com

 

ほかにも Renzetti というメーカーも評判がいいようです。

 

www.renzetti.com

 

このロック式のジョーは、力が要らないのが最大の長所ではないでしょうか。隙間の調整さえ出来て居ればレバーの開閉でフライフックの取り付けが簡単に出来ます。手で力を加えなくていいのでレバーもこじんまりして場所を取りません。

逆に隙間の調整が必要なことが短所でしょう。僕が使っているDyna-Kingはヘッドに大小ふたつのフックを固定する溝があります。なので「小さいフック←→大きいフック」の交換は、そのどちらかを微調整することで済みます。それでも微調整に気を使わなくていけないのは同じです。

どちらのジョーがいいのか?

好みの問題でしょう。手に力が入りにくいとか、そういった基礎的なハンデが無い限り、どちらでもオッケーでしょう。実際にお店でフックを付ける作業をやらせてもらって判断するのが一番でしょう。

特徴その2 ロータリー(回転式)かノン・ロータリー(非回転式)か

フライフックをジョーに固定したら、次はジョーがどのようにバイス本体に取り付けられているかが重要になります。大きく分けて「ジョーが360度回転できるもの」と「ジョーが全く回転しないか、少しだけ回転できるもの」があります。ここでは360度ぐるっと回転できるものを回転式、そうでないものを非回転式(もしくは固定式)と呼びます。

1)回転式

回転式バイスにもいろんな種類がありますが、このDyna-Kingのモデルが「良く見る形」だと思います。なんか歯医者さんで使われてそうな雰囲気がありますね。

回転機構を実現している部品をスピンドルと呼ぶことが多いそうです。スピンドルを回転させるためのスピンドルレバーや、回転抵抗を調整するスピンドルテンションノブなどの付随部品があるのが特徴的です。

dyna-king.com

このタイプのバイスは、ジョーが45度ぐらい傾いているものが多いです。これは回転式によくある特徴ですが「すべての回転式がジョーに傾きがある」というわけではありません。例えば、Regalのこのモデルはジョーは水平ですが、回転も出来ます。

 

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regalvise.com

ただ、上のどちらも「回転」は出来ますが「回転の軸」に関しては異なります。上の歯医者さんタイプ(笑)はフックの軸(シャンク)が回転の軸と同一です(同一にして使うことを目指しています。ただフックの固定の仕方次第ではズレますが・・・)。対して、下のRegalのタイプは作業しやすいようにフックの軸が出来るだけ露出した状態で固定するとフックの軸と回転の軸はズレます。フックの軸が、地球を回る月のような軌道になります。わずかな違いですが「巻き」の作業が多いタイプのフライだとやりにくいと感じる可能性はあります。逆のそんなに巻かないなら問題にはなりません。

 

2)非回転式

全く回転しないバイスもあります。

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www.griffinenterprisesinc.com


Regalの Medallion というモデルも回転しようと思えば出来るけど設計思想に「回転」というメカニズムは入っていないといって問題ないでしょう。

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regalvise.com

 

回転式かそうでないか、どちらがいいの?

これはずばり回転式がいいんじゃないのと個人的には思います。というか自分が作っているものは回転式じゃないと超面倒くさいです。「スレッドを巻く」だけなら「ボビンを持った手」をフックの軸にして「回せば」いいので、フックは一切動かなくても問題ありません。ですが、巻くのはスレッド以外の素材もあります。下地に針金を巻くこともありますし、シェニールという毛糸みたいなのや、羽を巻いたりもします。その場合、「手を動かす」のではなく「フックを回転させる」方がずっと作業効率が高いと言えます。

実際回転しないバイスはモデルとしても少ないような気がします。ただ、安いモデルに見受けられるので、値段だけみて買ってみたら回転しないってことにならないように、そういう「特徴」があると認識しておいた方がいいでしょう。

特徴3 バイスは台座式かC-クランプ式か

フックで始まって、それを固定するジョー、さらにジョーを回転させるスピンドルがあって、次にそのスピンドル部分を垂直に支える「シャフト」部分があります。このシャフトを机のどこに、どのように固定させるか、が3つ目の選択支になります。

これはほぼ2択です。これは写真で見比べれば一発で理解できます。

 

1)台座式

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2)C-Clamp

 

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バイスは台座がいいのか、C-clamp式がいいのか?

これも好みの問題です。実用面では台座は重たいものを選ばないと作業中にバイスごと動くこともあり、重たいものほど値段が高い感じがするので費用に影響があるかもしれません。C-clampはがっちり固定が長所ですが、作業そのものが「机の端」になります。これは良いのか悪いのか・・・ 机の上じゃないのでフックを落としたりしたら、落ちる先は床です。でも作業テーブルが無い(もしくは狭い)ならC-clamp式が活きてきます。

 

おまけの特徴 ボビンホルダー

この部分のことです。

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これは、あるかないかで言えば「あった方が便利」です。無くてもなんとかなるものですが、あれば「あ~便利」って思えるものです。

何にどう使うかというと、スレッドが巻いてあるボビンを「作業中にぶら下げ」て使います。どういうタイミングで使うかというと、スレッド以外の素材、例えば毛糸のようなものを巻いて「虫の身体」を作るとしましょう、その際にスレッドは切らずにボビンごと、ボビンホルダーに「退避」させておきます。

ボビンホルダーがスピンドル軸とほとんど同じになるように調整しておけば、スレッドのマネージメントが超楽になります。

まとめ

ということで超初心者が「これまでに分かったこと」をまとめました。あとは購入するお店で実際に触らせてもらって、すくなくともここで挙げた3つの機能について自分なりに「好き・嫌い」とか「要る・要らない」の判断をすればいいと思います。

値段については、1台しか所有した事ない自分にはなんとも言えませんが、世の中のいろんな商品がそうであるように、ハイエンドになれば部品などの「仕上げ」が高級になるだけで機能的にはさほど変わらない、という状況になるのではないかと感じます。

逆に安いモデルは、例えばロータリー機能がないとか、ジョーの固定する力が弱いとか、そういう機能面での問題が出る可能性があるので「安物買いの銭失い」にならないように気を付けたいところです。